日本のような掲示のルールはないようで、至る所手当たり次第に立てられるため、道路の見通しもかなり悪くなり、危険なほどです。驚くべきは、ほとんどの看板が、見るも無残に顔の部分が切り取られたり、落書きされたり、なぎ倒されたり、やりたい放題ということでしょう。
ただのイタズラか、はたまた政敵の仕業か、どちらにしても、立てては破られ、また立てては破られるの繰り返しになっています。この選挙看板、設置も不安定で、今回は落下による負傷者も出ているそうで、改善が望まれます。
暴動などを警戒してか、なんと投票日は法律で酒類の販売が禁止されています。近くのスーパーでも酒売り場はパーテーションで完全に閉鎖されていました。
大統領選は女性同士の戦いで、因縁の対決と言われてきました。候補者ミシェル・バチェレとエブリン・マテイの父親はその昔共にチリ空軍に在籍、家族ぐるみで親交があり、ミシェルとエブリンは子供の頃一緒に遊んだ友人でした。しかし、ピノチェトの軍事クーデターは二つの家族の運命を大きく分けてしまいます。ミシェルの父親はクーデターで倒された社会主義のアジェンデ政権で働いていたため、すぐに逮捕されます。一方エブリンの父親はクーデターを支持、ロンドンのチリ大使館からサンティアゴに呼び戻され、空軍学校の校長に任命されます。その間、ミシェルの父親は再び逮捕され、件の空軍学校に連行、地下室に投獄され、長い拷問の末無念の内に命を落とします。エブリンの父親は、ミシェルの父親の拷問に直接関与はしていないと言われています。スペイン語のM先生もおっしゃっていましたが、多くの反対者を拷問・虐殺したピノチェト独裁政権は今だにチリの人々の間に深い爪痕を残しています。
因縁の対決は、前評判通り、2期目を狙う前大統領ミシェル有利の戦いとなりましたが、過半数までは及ばず、12月15日の再投票に持ち越しとなりました。熱い戦いが今しばらく続きます。